時代と共に変わる金の役割

金プール制の廃止後、金価格は従来の1オンス35ドルという公定価格と、需給関係で価格が決定されるロンドン自由金市場価格の2本立てとなりました。
いわゆる「金の二重価格制」の始まりです。
言葉を変えて言えば、「金の一物一価時代の終焉」でした。
これを契機として、従来の通貨としての金が前面に出ていた時代から、通貨としての金に商品としての金が併存する時代へと変わったのです。

ところが、1971年8月のドルと金との交換をアメリカが一方的に停止したニクソンショックにより、通貨としての金は舞台裏に押しやられ、商品としての金が強調されるようになりました。
アメリカは「金は通貨ではなく商品だ」と主張して、金廃貨を唱え、基軸通貨国としての責任を突如として放棄してしまいました。
次に、1973年のオイルショックと、1974年のアメリカの40年ぶりの国民への金所有の自由化とが、80年代以降の金の姿を、従来の金の見方では考えられないほど大きく変えてしまうことになったのです。

現在エネルギーとして経済的に最も効率的とされている石油は、73年の第四次中東戦争を契機として4倍に値上がりしました。
経済活動の根源のエネルギー価格が、需給関係という経済理論によらず、武器の一つとして政治理論によってエンバーゴ(禁輸)という方法により左右されたことは、「経済の政治化」の象徴的出来事であり、いわば資本の論理の通用しない局面の出現ではありました。

金の多面的な側面

ドル建ての金価格の動きを見ると、1オンス35ドルから197ドルへの上昇、一転して103ドルへの下落、103ドルから850ドルへの高騰、そして281ドルのボトムへ、次に502ドルへ上昇の後326ドルへの下落、という具合に乱降下しました。

一方、円建ての1グラム当たりの価格の動きを見てみると、為替相場が1ドル360円から80円へと円が4倍以上に強くなったプロセスで、円が円安にふれるタイミング等により、金価格の変動幅はドル建て価格の変動と比較にならないくらい上下に揺れ動きました。
1グラム825円から2020円へ急上昇の後、半値の1005円へ急落、80年1月には6495円と6.5倍の急騰の後、一度2451円まで下落して、4184円まで戻したかと思ったら、あとは円高のペースに合わせて、とうとう大きな戻りも見せずに1019円と、約19年前の1005円とツラ合わせの水準になってしまいました。
こうした金価格の変動の激しさに、つい金の価値まで下がってしまったのかと錯覚させられてしまいます。

金の本質つまり金の価値は数千年の間にいささかも変化していません。
しかし、金の価格は、商品としての金という性格が人々に強く認識されるようになるとともに、その変動幅を増大させてきました。
金の価格は、ある特定の時に他の財貨と交換する場合の通貨という物差しで計った量目です。

金はもともと多面的な要素を持っています。
従来、金の多面的な側面はまず「通貨としての側面」、2番目に「産業用素材としての側面」、3番目に「財産保全の手段としての側面」としてとらえられるのが一般的でした。

しかし、急激に起こった価値と価格の分離現象を理解するには、このような70年代までの金への理解の仕方では不十分なのです。
80年代以降の金の動きは、「通貨としての金」「商品としての金」、そして「武器としての金」という3つの視点から見るととても理解しやすいのです。
この3つの分類方式にしたがって、価値と価格の分離の動きと、その背後の要因を探ってみましょう。

価値と価格の分離現象が生じたのは、1934年にルーズベルト大統領によって1オンス35ドルに固定された金が、金と取り巻く環境の変化に伴って、政治的に決められた35ドルという価格のワクに収まらなくなってきたからです。

第二次大戦後の度重なる通貨危機に際して、1961年以降アメリカと西欧7カ国は金プール制をとり、共同して金と出し合い、固定された金価格の維持に努力してきました。
しかしついに金の売り支えができず、1968年3月に金プール制を廃止しました。
ここに価格を不当におさえられた金の内在するエネルギーが爆発したのです。

金の価値と価格

最も愚かな金の持ち方は、金を持っていることによって、イライラしたり不安になったりしてしまうことです。
せっかく何かの縁で金を持つようになったのに、「買値より3割も下がってしまった。少し下がったあの時に思い切って一度売っておいて、大幅に下がった今買い戻せば少ない損ですんだのに」と悔やむ。
また、「国際紛争が起こっても、金価格が上がらないばかりでなく、かえって下がってしまうのはおかしい。今日こそ上がるに違いない」と、購入先へ電話を入れたり、テレホンサービスの金価格が仕事中も気になったりする。
あるいは、底値だと思って買ったのに、ズルズルと値下がりして、毎日不安にかられている人もいます。

「金は安心を買う」といわれてきました。
しかし、なぜ金を持った為にかえって心の安定を失うということになるのでしょうか。

それは1970年代から80年代にかけて「金の価値と価格の分離現象」が起こったことを認識していないからです。
金の価値は変わらないが、金の価格は大きく変動するようになったことを見逃していると、金の動きはますますとらえどころがなくなり、不安やイライラの原因となります。

日本人の金への関心

日本人の金への関心は年々高まっています。
金定額購入システムを利用して、月々3000円や5000円といった金額を積み立てながら、身近に金を楽しんでいる人の数が急増しています。
都市銀行、信託銀行、地方銀行、信用金庫等の金融機関、田中貴金属のような地金商、住友金属鉱山、三菱マテリアル等の産金鉱山会社が、金を身近に楽しみながら増やすこのシステムのサービスをしています。
一定量がたまると、金の地金として受け出して手元に置いておくこともできます。
金貨や金のネックレスやブレスレット等の宝飾品との等価交換に応じているところもあります。

ヨーロッパでは子供の誕生日ごとに金貨を記念にお祝いとして与えている家庭も多いのですが、日本でもこの金定額購入システムを利用して、赤ちゃんが生まれるとお子さんの名義の口座を開く家庭も増えています。
1年間に60万円までは贈与税がかからないので、この範囲内で節税しながら長期的に金の量を増やす楽しみ方をしているケースもよく見られるとのことです。

長期にわたって買っていくわけですから、その日その日の金の価格変動にとらわれずに、量を増やしていくことが可能です。
いまや金定額購入システムの口座数は対前年比34%も増え、50万口座を突破しました。